給料は上がらないのに、買い物のたびに値段が上がっている。

何か副業を始めたいと思うのは、いまの暮らしではごく自然なことです。

実際に、副業をしたいと考えている人は国の調査でもはっきり増えています。

この記事では、副業を始めたい人が増えている理由を公的な数字で整理しました。

そして、「簡単に稼げる」とうたう副業の相談も同じ時期に増えています。

始める前に知っておきたいことまで、順番にまとめています。

副業を始めたい人が増えている理由|結論

副業を始めたい人が増えたのは、収入を増やしたい人が多いところに、2つの変化が重なったからです。

会社が副業を認め始めたことと、物価に給料が追いつかない年が続いたことです。

労働政策研究・研修機構が2022年10月に、副業をしている人に理由を聞きました。

1位は「収入を増やしたいから」で、54.5%でした。

2位は「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」の38.2%です。

副業をする人の多くは、まずお金のために始めているということです。

総務省の調査では、本業を続けながら他の仕事もしたい人は493万人で、5年前より93万人増えています。

この493万人は、5年前より2割以上多い数字です。

副業をしたい人は5年で93万人増えた

副業をしたい人は、2017年の399.9万人から2022年の493.4万人へ、5年で93万人増えました。

総務省の就業構造基本調査は5年に1回、仕事について大規模に調べている国の統計です。

この調査では、いまの仕事を続けながら他の仕事もしたい人を「追加就業希望者」と呼んでいます。

副業をしている人も305万人に

すでに副業をしている人も、5年前の245.1万人から304.9万人に増えています。

下のグラフは、副業がある人と、副業をしたい人の数を2002年から並べたものです。

総務省の就業構造基本調査で、2022年の副業がある人が304.9万人、追加就業希望者が493.4万人と、どちらも2017年より増えている

副業がある人は、2017年までは200万人台で横ばいでした。

それが2017年から2022年にかけて、副業をしたい人と一緒に大きく伸びています。

正社員で副業をしたい人の割合が一番伸びた

特に伸びたのが、正社員で副業をしたい人です。

正規の職員・従業員で副業をしたい人の割合は7.7%で、5年前より2.4ポイント上がりました。

数字をまとめると、次のとおりです。

2022年の数字5年前との差
副業がある人 305万人60万人増
副業をしたい人 493万人93万人増
正社員で副業をしたい人 7.7%2.4ポイント増

では、なぜこれほど多くの人が副業をしたいと考えているのか、理由を聞いた調査を見てみます。

副業を始める理由は「収入を増やしたい」が最多

副業を始める理由は、「収入を増やしたいから」が54.5%で一番多くなっています。

労働政策研究・研修機構が、副業をしている1万1,358人に聞いた調査の結果です。

労働政策研究・研修機構の調査で、副業する理由は「収入を増やしたいから」54.5%、「1つの仕事だけでは生活自体ができないから」38.2%となっている

上位5つの理由を並べると、次のようになります。

副業する理由割合
収入を増やしたい54.5%
1つの仕事では生活できない38.2%
活躍できる場を広げたい18.7%
時間のゆとりがある15.8%
色々な人とつながれる13.2%

上の2つはどちらもお金の理由で、副業をする人の多くは「生活のため」に始めていることが分かります。

正社員でも「収入を増やしたいから」が59.1%で、働き方に関係なくお金が一番の理由でした。

副業の収入は月5万円未満が4割

では、副業で実際にどれくらい稼げているのでしょうか。

同じ調査で、1カ月あたりの副業の収入を聞いた結果がこちらです。

労働政策研究・研修機構の調査で、1カ月あたりの副業の収入は5万円未満が合わせて41.2%、5万〜10万円未満が30.0%、25万円以上は6.9%となっている

月5万円未満が合わせて41.2%で、5万〜10万円未満が30.0%でした。

月25万円以上を稼いでいる人は6.9%しかいません。

副業の広告では「月30万円」「月50万円」といった数字をよく見かけます。

実際に副業をしている人の数字と並べると、月数万円がいちばん多いというのが本当のところです。

月に数万円増えるだけでも暮らしはずいぶん楽になるので、それ自体は十分な成果だと思います。

副業を始めたい人がここまで増えたのには、ここ数年の3つの変化が関係しています。

副業を始めたい人が増えた3つの背景

副業を始めたい人が増えた背景には、会社のルール・物価・スマホの3つの変化があります。

どれもここ10年ほどで起きた変化です。

会社が副業を認める方向に変わった

1つ目は、会社が副業を認める方向に変わったことです。

厚生労働省は2018年1月に、会社の就業規則のお手本になる「モデル就業規則」を改定しました。

それまであった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という決まりは削られました。

代わりに、副業・兼業についての決まりが新しく作られています。

いまのモデル就業規則(2025年12月版)では、第70条にこう書かれています。

労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

厚生労働省「モデル就業規則」第70条(2025年12月版)

あわせて出された厚生労働省の副業・兼業のガイドラインには、会社の基本の姿勢がこう書かれています。

原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2022年7月改定)

副業は会社に隠れてするものだった時代から、届け出てするものへ変わってきました。

物価に給料が追いつかない年が4年続いた

2つ目は、物価の上がり方に給料が追いつかなかったことです。

厚生労働省の毎月勤労統計調査では、物価の上がり分を差し引いた「実質賃金」が、前年を下回る年が続きました。

厚生労働省の毎月勤労統計調査で、実質賃金の前年比が2022年-1.0%、2023年-2.5%、2024年-0.3%、2025年-1.3%と4年続けてマイナスになっている

2022年から2025年まで、4年続けて実質賃金がマイナスでした。

2025年は物価が3.7%上がったのに対し、実質賃金は1.3%下がっています。

なお、2026年に入ってからは、実質賃金が前年を上回る月が続いています。

8月分の速報では、8カ月連続のプラスでした。

それでも、4年分の目減りがすぐに取り戻せるわけではありません。

2022年の調査の時点で、すでに4割近くが「1つの仕事だけでは生活できない」と答えていました。

その後も、実質賃金は3年続けて下がっています。

スマホで始められる副業の話が増えた

3つ目は、スマホ1台で始められる副業の話が増えたことです。

ネットで仕事を受けたり、ものを売ったりできるようになり、副業を始めるハードルは確かに下がりました。

その一方で、「スマホだけ」「1日10分」とうたう副業の話も、SNSでよく見かけるようになりました。

ここが、副業を始めたい人が知っておきたい次の話につながります。

副業を始めたい人を狙った副業の相談も増えている

副業を始めたい人が増えるのと同じ時期に、「簡単に稼げる」とうたう副業の相談も増えています。

国民生活センターには、簡単なタスクで稼げるとうたう副業の相談が、年々多く届くようになりました。

国民生活センターのグラフで、簡単なタスクで稼げるとうたう副業の相談が2020年度1,341件から2023年度3,694件に増え、平均契約購入金額が279,519円から1,059,658円に上がっている

契約や請求された金額の平均は、2024年度(7月末まで)で約106万円と、2020年度の4倍近くです。

2025年度の「内職・副業その他」の相談では、20歳代が34.3%で一番多くなりました。

副業をしたい気持ちが強い人ほど、「簡単に稼げる」の一言に動かされやすいのだと思います。

こうした副業の多くは、仕事の中身を説明しないまま、途中からお金の話に変わっていきます。

見分け方は、公的機関のデータと一緒に別の記事にまとめました。

LINE副業は怪しい?安全の見分け方と公的データで見る被害の流れ

どの事例も、仕事の中身が説明されないまま、払う金額だけが増えていきました。

ここからは、副業を始める前に知っておきたいことを3つにまとめます。

副業を始める前に知っておきたい3つのこと

副業を始める前に知っておきたいのは、会社のルール・税金・お金を払うタイミングの3つです。

どれも始めてから知ると困ることなので、先に目を通しておいてください。

会社の就業規則で副業の扱いを見る

副業を始める前に、勤め先の就業規則で副業がどう扱われているかを見てください。

モデル就業規則では、副業を禁止したり制限したりできるのは次の4つの場合とされています。

制限される場合例
本業に支障が出る疲れて本業に響く
会社の秘密が漏れる本業の情報を使う
会社の信用を損なう会社の名前を出す
本業と競合する同じ業界で働く

国のひな形では、届け出をすれば認めるのが基本の形になっています。

ただし就業規則は会社ごとに違い、届け出が決まっている会社で届け出をしないと規則違反になります。

副業の所得が20万円を超えたら確定申告が要る

会社員が副業を始めたら、税金のことも頭に入れておいてください。

国税庁のタックスアンサーには、会社1か所から給与をもらっている人の条件がこう書かれています。

給与以外の所得の合計が年20万円を超える人は、確定申告が必要です。

所得は、売上から経費を差し引いた金額のことです。

副業がアルバイトなど2か所目の給与の場合は、所得ではなく、その給与の収入金額で20万円を超えるかを見ます。

稼ぎ方が分からないうちはお金を払わない

何をして稼ぐのか分からないうちは、お金を払わないでください。

学ぶためにお金をかけるのは、悪いことではありません。

ただ、仕事の中身を知るためにまずお金が要ると言われたら、払う前に一度立ち止まってください。

!
払う前に止まってほしい言葉
  • 仕事の内容は購入後に案内します
  • 報酬を受け取るには手数料が必要です
  • 足りない分は借りれば大丈夫です

どれも、国民生活センターや消費者庁が公表している相談事例で言われた内容です。

最後に、ここまでの内容を短くまとめます。

副業を始めたいなら中身が分かるものから|まとめ

副業をする人の多くは、収入を増やしたい・生活を守りたいという理由で始めています。

副業をしたい人は5年で93万人増えて493万人になり、会社も副業を認める方向に変わってきました。

実際に副業をしている人の収入は、月5万円未満が4割で、月25万円以上は6.9%でした。

一方で、「簡単に稼げる」とうたう副業の相談も増えています。

契約や請求された金額の平均が、100万円を超える年まで出ています。

副業を始めたいと思ったこと自体は、とても前向きな一歩です。

だからこそ、何をして、どこからお金をもらう仕事なのかが分かるものから選んでください。

その答えが払う前に返ってくる副業なら、落ち着いて比べることができます。

広告の「簡単」「すぐ稼げる」に急かされず、自分のペースで始めて大丈夫です。